GODZILLA MINUS ONE hits US theaters on Friday, December 1st nationwide!
冒頭で早速、頭からガブっと人を食い見得を切る姿は映画「ジュラシック・パーク(Jurassic Park)」を連想させる。初代「ゴジラ」公開から70周年を記念した本作「Godzilla Minus One」は、実写邦画としては2016年の「シン・ゴジラ」以来7年ぶりで歴代30作目。舞台は戦後の日本。“無(ゼロ)”となった日本に追い討ちをかけるように”マイナス”に叩き落とす、絶望の象徴・ゴジラは敵なのか?
監督 ― About Director
本作のメガホンを取ったのは山崎貴監督。彼は13歳のとき「スター・ウォーズ(STAR WARS)」と「未知との遭遇(Close Encounters of the Third Kind)」に出会い、特撮の仕事を志す。本作と同じ時代背景である昭和の日本を描く「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005)は日本アカデミー賞の監督賞を受賞。
本作は、1954年公開の初代「ゴジラ」を意識して製作されたと監督談。線路を踏ん付けて電車の車両を咥えるシーンなんかは特に初代「ゴジラ」と似ている。もちろん本作ならではの描写もあり、ヒロインの大石典子(浜辺美波)が車両の鉄棒に捕まり宙ぶらりんになるシーンは滑稽で思わず笑ってしまった。ちょっと大袈裟で、ハリウッド映画的というか。ただ、ゴジラが線路を跨ぐシーンは2016年公開の「シン・ゴジラ」にも登場するし、正直、ストーリー展開は過去作と然程変わりない。であるだけに、怪獣映画の元祖・ゴジラの醍醐味は「この監督はこの名シーンをどう描く?」と楽しめるのも事実。
また、ゴジラを倒すために作戦を練るシーンが劇中終盤に出てくるのも過去作との共通項。初代ではゴジラを感電させる作戦、「シン・ゴジラ」ではゴジラを冷凍させる”ヤシオリ作戦”、そして本作は海底でゴジラの息の根を止める”海神作戦”。ああでもない、こうでもないと時間をかけて論議してなかなか行動に起こさない過程はいかにも日本人らしい。
強い女性像 ― Women’s Empowerment
初代「ゴジラ」では、ヒロインの恵美子が涙するシーンが目立つ。恵美子は、ゴジラを倒せる唯一の破壊兵器を極秘で開発していることをかつての婚約者である芹沢博士から知り「誰にも言うな」と口止めされながらも現恋人の尾形にバラしてしまう。
芹沢博士との約束を破った恵美子は本人の目の前で「ごめんなさい」と泣きじゃくって事なきを得る。いまだ恵美子へ思いを抱く芹沢と、恵美子を愛する尾形との三角関係は”女の涙”で全て解決してしまう。そんな描写が幾度かあり”強い女性像”が表に出る今の時代との違いを感じる。
対して本作は、ゴジラの放射火炎から敷島浩一(神木隆之介)を守るために典子が犠牲になったり、二人が育てる子どもを隣人の太田澄子(安藤サクラ)が面倒を見るなど逞しい女性像が描かれている。その子どもは女の子で、名前は明子(Akiko)。「明子」の”明”はきっと”日本の明るい未来”を願って名付けられたと仮定してみても、元祖ゴジラの公開から70年を経て、女性の在り方の変化が本作に表れているように思えた。
アメリカの反応 ― American Audience
…と、色々と論じてみるけど鑑賞中に盛り上がったのは、とにかくゴジラの登場シーン。50メートルの巨体を足元から舐めまわしゴツい肌を経由して恐々しい顔面まで見せるカメラワーク、そしてあの唸り声が響いたときには「待ってましたー!!」と言わんばかりの拍手と歓声が上がった。
ゴジラは何者なのか?物語の意図は?そんなものは二の次で、とにかくキング・オブ・モンスターのクールな姿が見たい!というファンが明らかに多い気がした。戦時中のシリアスなシーンでも、ちょっとした笑いをとるようなセリフにゲラゲラ笑ったりするのもアメリカの観客ならではの反応。水面に出現して船を追う巨大なゴジラの姿は映画「ジョーズ(Jaws)」よりも遥かにおっかない。70年前から変わらない”あの”テーマ曲が流れた瞬間の盛り上がりも印象的だ。
生きて、抗え。― Survive and Fight.
力強い陸の生き物「ゴリラ(Gorilla)」と巨大な海の生き物「クジラ(Kujira, Whale)」を混合した造語「ゴジラ(Gojira)」の英語名「Godzilla」は、海外輸出の際に命名されたもので「God(神)」を意味する。“人間が生み出した恐怖の象徴”として描かれたゴジラは、核兵器という人間が生み出したものによって現れた怪獣が人間の手で葬られるという人間の身勝手さを表現した作品であることも念頭に置いておきたい。
本作の主要人物は、危機には迫るものの誰も死なない。特攻隊から逃げた敷島は”生き抜く(Survive)”ことでその罪を償うよう定められたかのように心に傷を負う。このような過去の自分との葛藤は「タイタニック(Titanic)」で女子供優先とされた救助船に乗り込み後から後ろ指を指される男性陣や、映画「オッペンハイマー(Oppenheimer)」で自ら核の時代をもたらしたことを悔やむオッペンハイマー博士の、トラウマと戦う姿と重なる。
先述した「ジュラシック・パーク」では、意図的ではないにしろラストシーンで恐竜が人間を救ってなんだかメイクセンスな終わりを迎えるが、ゴジラは特に人間を助けることはないし、かといって意図的に人間を懲らしめることもない。人間を襲っているように見えるが、実際は自身が何者なのか分からずただパニックに陥って放射したり破壊しているように思える。
“世界のキャラクターは善か悪かのどちらかなのですが、ゴジラはフォルムと巨大さだけを担保できていれば、どうやってもゴジラなんですー。”山崎監督は語る。鑑賞後に会場を見渡すと、ゴジラのTシャツを着た熱狂的なファンたちが見られた。モンスターであり神様であるゴジラは、敵でも味方でもないのだ。立ち位置を決めていないキャラクターというアプローチが、誕生から70年間ずっと愛され続けている一つの理由だと言える。
FILM: GODZILLA MINUS ONE
Dir. Takashi Yamazaki, 2023, 125 min., DCP, color, in Japanese with English subtitles. With Ryunosuke Kamiki, Minami Hamabe.
The King of the Monsters for a special screening of the first Japanese Godzilla film since 2016. Written and directed by award-winning director Takashi Yamazaki, Godzilla Minus One presents a new focus for the saga and is set in a devastated post-war Japan. It follows the country still recovering from the scars of the past as a new threat appears, and it asks the question of what happens when a disarmed and defenseless Japan encounters Godzilla. The film features an all-star cast including Ryunosuke Kamiki, Minami Hamabe, Yuki Yamada, Munetaka Aoki, Hidetaka Yoshioka, Sakura Ando, and Kuranosuke Sasaki. Presented in partnership with Toho International. Godzilla Minus One comes to theaters on December 1 nationwide.
Yamazaki developed an interest in filmmaking and visual effects after watching Star Wars and Close Encounters of the Third Kind. He began his career in 1986 and later made his feature film debut with Juvenile in 2000. Yamazaki gained recognition with his third film, Always: Sunset on Third Street in 2005 which won 12 awards at the 29th Japanese Academy Awards. Yamazki has directed several film adaptations of popular anime, novels and manga including The Eternal Zero in 2013 and Stand By Me Doraemon in 2014 – both that went on to earn a total of nine awards at the 38th Japanese Academy Awards. Some of Yamazaki’s other directorial credits include Parasyte (2014), Dragon Quest: Your Story (2019), Lupin III: The First (2019), Stand by Me Doraemon 2 (2020) and Yokaipedia (2022).
Japan Society programs are made possible by leadership support from Booth Ferris Foundation, and the New York State Council on the Arts with the support of the Office of the Governor and the New York State Legislature. “Godzilla is one of Japan’s most iconic creations, and Japan Society is honored to present Toho’s latest Godzilla film for the first time in New York” said Japan Society Director of Film Peter Tatara.